爽塾ブログ

「大人のための作詞教室・爽塾」2023年前期のレッスンも、このタームの修了まで「マジック2(残り2回)」となりました。今日から作詞に取り組む4曲目の課題曲がこのタームの最後の課題、つまりは卒業制作になります。

今回も生徒さんの声も交えつつ、レッスンのレポートをお届けします。

まず取り組んだのは、課題曲のヒアリングと企画立案、企画会議。
「こういうシーンを描きたい、こういう歌詞を書きたい」というプランはあくまでプランであって、そのすべてが歌詞に落とし込める訳ではありません。けれど、描きたい歌詞の背景にあるストーリーに齟齬があると、それは歌詞の中に「突っ込みどころ」として現出します。ですので、爽塾ではこのプロセスを重視して、「どういう歌詞を書くのかというプラン、ヴィジョンを定めてから、作詞に取りかかる」ことを徹底しています。
さて、4曲目の課題曲に選んだ楽曲は、ミディアムテンポで少し歌謡曲テイストのある、寂しげなメロディのナンバー。3曲目の課題曲は弾むようなポップなメロディだったので、あえて方向性の違う曲を選びました。
陽気なメロディにはハッピーな歌詞がふさわしく、その逆に、マイナー調の悲しいメロディには悲しいストーリーの歌詞がフィットするのは言うまでもありません。これまで課題曲に選んだ3曲には、「失恋」なり「別れ」を想起させるテイストの曲はなかったので、選曲にあたっては良いチャレンジになればという思いもありました。
このタームの受講生・Ruさんは企画を練るのが得意なタイプですが、今回は少し苦労したのか、発表してもらった歌詞のプランはいつもよりもファジーな感じ。話し合いのうえ、「恋人同士が別れたという設定なら、どういう理由があって別れたのか、その時、ふたりはどんな気持ちだったのか?」といったポイントをフィックスしていきました。
 


と、Twitterでのコメントを紹介しましたが、ふだんからRuさんは「ハッピーエンド大好きで、それ以外はちょっと……」ということは初耳でした。実際、過去に同じような嗜好だった生徒さんはいなかったため、ちょっと新鮮に感じましたね。

この場を借りて、アドバイスするなら、「ハッピーエンドが好きな自分が、もし今回の歌詞で描くべき、ハッピーではないシチュエーションに遭遇したら、どう感じるだろう?」と、歌詞の中の主人公たちに思いを馳せてみてください。「その歌詞を歌う歌い手さんが歌った時に輝けるように」というイメージを実現していく意志も大切なポイントです。

レッスンの後半は、再提出された課題③の歌詞のレビューを行いました。
詳細は割愛しますが、「新しい恋に戸惑う大人の女性の揺れる気持ち、戸惑い」を描くにあたり、ストーリーのリアリティを向上させるため、企画時に設定した季節感や固有名詞を歌詞に取り入れることを進言しました。歌詞の更なる成長を願うばかりです。

次回はいよいよ、このタームの最終回。
オンライン・レッスンながら、レッスン後にささやかな打ち上げをしようと計画しています(笑)。オンライン・レッスンに切り替えてから、こういうのは初めてなので楽しみですね。かつては、最終回のレッスンの後、場所をお借りしていた下北沢の「Brown’s Books Café」から移動して、別のお店で楽しく歓談してお別れしたことが良き思い出です。

最後のレッスンは、ハッピーエンドで終わりたいですね。いや、必ず、そうしてみせます(笑)。


Power to The Songs!

歌に力を!


かつしかFMにて。
ゲスト出演でお世話になった『ロッキンスター』のDJ、佐々木健二さんと。
自分がCDを手にしている、NOBODYの『POP GEAR』特集でした。

「大人のための作詞教室・爽塾」2023年前期のレッスンも、今日のレッスンで10回目。来月下旬の最終回まで、あと3回となりました。
今回も生徒さんの声も交えつつ、レッスンのレポートをお届けします。

図らずも「マンツーマン」スタイルのレッスンとなった、このクールのレッスンのスタートに際して、自分が定めていた「裏テーマ」があるので、そのことをちょっと記しておきます。
それは、「グループレッスンと同じ料金で、可能な限り、個人レッスンと同じクオリティのレッスンを提供する」ということでした。
カリキュラムの改訂を行ったこともあり、以前に比べると取り組む課題の数が減ったため、ひとつの作品にじっくり取り組むことができるようになりました。それに加えて、SNS上で熱心にコメントしてくれた生徒さんの情熱に応えるように、できる限りの対応もしてきましたので、ほぼそれは達成できているかと思います。
個人レッスンの場合、受講料はグループレッスンより割高にはなりますが、取り組む課題の数や課題曲の曲調などすべてのカリキュラムを生徒さんのお好みでカスタマイズすることに加え、労力を1人の生徒さんに集中するだけに指導も密になります。現在は休講中ではありますが、先々、個人レッスンも再開できればと考えています。

閑話休題。

今回のレッスンは、課題のレヴューを行う回でした。
メインに講評するのは、前回企画をまとめた最新の課題③なのですが、完成間近だった課題②の講評から先行してレヴューを行いました。
結論から言いますと、3度目の提出にして、歌詞は遂に完成!
「まったくの未経験から作詞を始めた生徒さんが、メッセージがきちんと伝わる歌詞らしい歌詞を書き上げたことは賞賛に値する」と心から思います。さらに、「今後は、完成した歌詞のクオリティを初稿の段階で実現できるよう努めてください」とエールを贈りました。完成した歌詞は、後日公開しますね。

さて、次にレヴューを行ったのは、今回のメインテーマである「課題③」の歌詞です。田村信二さん作曲のデモはご本人歌唱(!)による、弾むようなポップナンバー。
初稿の歌詞は未完成でしたので、今回は生徒さんに伝えた「精度の高い企画を歌詞に落とし込む際の注意点」の要点をちょっぴりご紹介します。

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いつも通り、企画のディテールが素晴らしいです。
楽器を弾く人なら耳慣れた表現かもしれませんが、「手癖」という言葉があります。アマチュア・ミュージシャンの場合、「こういうシチュエーションで、同じようなフレーズを弾きがち」みたいな癖があるもので、自分では気づかないうちに、マンネリに陥りがちになっていることが往々にしてあるのです。作詞にしても同様の部分はあって、多くのアマチュアの方は自分の手癖の要因が分からず、なかなかマンネリの解消法が見つからないもの。
以下の通り、企画書から読み取れる手癖を解説し、実力アップへの足掛かりとしたいと思います。

▼企画と歌詞の関係
現状のところ、企画の完成度の高さが今ひとつ歌詞に生かされていない部分があるので、以下を心がけてみましょう。

・「ストーリー」が仕上がったところで、「キーワード」を見直してみる
キーワードを多く考案することも大切ですが、優先順位を明確化するとベターです。
「このストーリーのテーマは何か?そのテーマを要約すると、どんなワードになるか?」と言う視点で、キーワードを再考してみてください。より分かりやすく言うと、こういうイメージです。
ストーリー > 歌詞のテーマ > キーワード > タイトル※今作で言うと、以下の部分をより明確に描くことで歌詞の魅力が増します。「こういう時、どうしたらいいの? 素直に飛び込めばいい?」という気持ちは、戸惑い、逡巡。
噛み砕いて言うと、描きたいシチュエーションは、「好きな人と両思いになって、ひたすらハッピーです!」ではなく、「好きな人ができて恋が始まったことはうれしいけれど、本当にうまくいくのかな?でも、ハッピーエンドをつかみたい」ということかと思うので、ヒロインの揺れる気持ちを表すには、タイトルは再考した方が良いでしょう。

・リアリティ向上ポイントを、適度に盛り込みましょう
 「実際に歌詞に入れて、リアリティ向上を」と企画書に赤字を入れた項目は、企画書に記載があるけれど、ほぼ毎回、初稿の歌詞の中には抜け落ちている要素です。
 いつもお話ししている通り、企画書と歌詞はフォーマットが異なる別物ですので、企画書のすべては歌詞に反映することはできませんが、そこを工夫していくことでリアリティがより向上して、歌詞のクオリティもアップします。

▼タイトルとサビの関係
多くのスタンダードナンバー、ヒット曲がそうであるように、タイトルはサビの適切な箇所に入れるのがベターです。
※テキスト13ページ参照

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こんな感じのアドバイスをしていきました。
以下、SNSでの生徒さんのコメントをご紹介します。

 
 

 
 

 
 

 

次回のレッスンでは、このタームでは最後の課題曲を聴きながら、歌詞のプランを練っていきます。
どんな曲を選んでも田村信二さん作曲の素晴らしいメロディではありますが、いわば「卒業制作」なのでちょっと迷いますよね。

なお、10月からのタームについては、現在受講中の生徒さんが継続して受講することもあって、キャパシティの関係から追加募集の枠は若干名となる予定です。
詳細は、9月11日までに告知いたします。

Power to The Songs!

歌に力を!

※課題曲をご提供くださっている、作曲家の田村信二さんと参加した試写会にて。このクールの生徒さんのがんばりも、田村さんにきちんとお伝えしてます。

 

このタームのレッスンも、残すところ2ヶ月。早いもので、あと4回で修了となります。

さて、9回目のレッスンは、3曲目の課題曲にどんな歌詞を書くのか、プランを練るのがメインテーマ。生徒さんの考案したアイディアをヒアリングした後、あれこれとやりとりしつつ、企画をまとめていきます。
今回の課題曲は、これまでの課題曲とは一味違って、ミディアム・テンポながら、弾むようなポップでキュートなメロディ。主旋律は作曲した田村信二さんが自ら歌っています。余談ですが、「作曲家の方が自分で歌うデモ」って昨今では意外とレアなので、とても貴重です。
約30分ほどかけて構想を練ってもらい、その内容をヒアリングしていきました。
受講生のRuさんがまとめたプランは、「海辺の街を舞台に、30代でヨガのインストラクターのような仕事をしているヘルス・コンシャスな女性が、数年ぶりに恋に落ちた時のドキドキ感、ときめきを歌詞のテーマにしたい」のとこと。
期待どおり、ポップなメロディにふさわしいテーマが提案されると、何だかうれしいですね(笑)。

爽塾では、基本的に歌詞のテーマはフリーテーマで、課題曲の曲調からイメージをふくらませる形で、生徒さんが歌詞のコンセプトを自由に決めるスタイルを採っています。時と場合によっては、「今回はクリスマスソングで」という若干の縛りを設けることもありますが、基本的にフリーテーマです。何故そうするかと言えば、プロの世界の作詞コンペのように発注内容に添って作詞をするよりも、全く何もないゼロの状態から企画を立ち上げる方がより難易度が高く、作詞の基礎体力をつけるトレーニングとして適しているからです。

閑話休題。

さて、新しい課題の企画会議の後は、お待ちかね(?)の歌詞レヴューへ。
今回、レヴューを行ったのは、2曲目の課題曲に合わせて書かれた歌詞の2度目のレヴューとなります。

▼総評
1回のリライトでここまで底上げできれば上出来です!
初稿で50点ぐらいだった歌詞が、70点ぐらいのクオリティになりました。
あともう少し底上げできて80点のハードルをクリアできれば、いったん完成扱いとして「○」をつけます。

▼修正箇所について
・1A)に関しては、1行目よりも2行目の方が出来が良いですね。
具体的には、「少しだけ交わす言葉 僕の胸たたいた」というフレーズで出会ったばかりの2人のぎこちなさが表現できているところが素晴らしいです。
それに比べて1行目はシーンが思い浮かべにくいところがあるため、もうひと頑張りしてみましょう。
・1A’)は、ほぼアドバイス通りですが、だいぶ底上げできたかと思います。
 時系列を細かく言うと、お祭りにふたりで行った夜に主人公が恋心を自覚したとしたら、その時点ではまだ友達付き合いであった可能性が高いので、1行目の「手を繋ぎ」という表現は時期尚早かなと思います。
・1C)2行目の「二人で描く 僕らのdestiny」については、どちらかと言えば、彼の気持ちの方が先行していると思うので、交際の進捗を考慮すると「二人で描こう 僕らのdestiny」の方がベターかと思います。
・2A’)の1行目「まっすぐな君の言葉 心励ますから」のフレーズで、相手のどこが好きなのか、きちんと表現できているところが良いです。
 これは、ラブソングの歌詞ではかなり重要なポイントなので、今作以降も続けてください。

と、こんなアドバイスをしていきました。
歌詞が完成したら公開しますので、、お楽しみに!以下、「X」での生徒さんのコメントです。

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次回のレッスンでは、本日、企画をまとめた3作目の歌詞のレヴューを行います。
名作誕生を楽しみに、提出を待ちたいと思います。

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「大人のための作詞教室・爽塾」2023年前期のレッスンも8回目を迎え、今回は2曲目の課題曲に書かれた歌詞へのレヴューを行いました。
歌詞が未完成であることも踏まえ、作成中の歌詞は記載しませんが、生徒さんのツイートも交えながら、「どんなアドバイスを行なったのか?」という観点からレヴューの一部をご紹介します。

▼総評
まずは、作詞を初めて3ヶ月で、〆切までにフルコーラスの歌詞が書き上げられたのは大きな進歩でした。現状、順調に進歩できていると思います。
「生徒さんがより確実にスキルアップできるよう、課題制作の数を減らして、『量より質』を重視しよう」というコンセプトでカリキュラムの見直しを図ったことは、今のところ奏功していると感じています。このままの調子で真摯に取り組んでもらえれば、より高いレヴェルで「進歩できた!」という実感が得られるのも遠くはないと思います。

▼歌詞のコンセプトについて
当初、考えていた「クリスマスソング」というコンセプトがそのままという視点で歌詞をチェックしましたが、クリスマスソングらしい描写は一切ないため、「そもそも、クリスマスソングにできるのか?する必要があるのか?」というクエスチョンからレッスンを始めた次第です。
結果、そうでない方向で仕上げることになったので、企画段階でまとめたアイディアを変更したとか、実際書いてみたらうまくいかなかったとか、そのような場合は、その旨を企画書の提出時に申告していただけると助かります。

▼企画段階のストーリーについて
いつもながら、綿密に練られたストーリーは素晴らしいと思います。
ことストーリーのリアリティということに関して言えば、これまで爽塾で学んだ生徒さんの中でも、間違いなく上位にくるレヴェルです。大いに自信を持っていいかと思います。
ただ、歌詞は小説やシナリオではないので、考えたストーリーから、「共感できるエピソードやシーンの描写」を紡ぎ出し、メロディと擦り合わせながら、フレーズをまとめていくということが大切で、それこそが作詞の本質と言えるでしょう。今後の課題として、このことを忘れずにいてください。
具体的には「春にこうした 夏にこうした」と説明口調で書くのではなく、「夏祭りの夜 君の浴衣姿 花火を見上げる横顔が・・・」というシーンを描くことで、リスナーは歌の世界に身を委ねることができるのです。
そしてまた、「こういうことってあるよね」とリスナーが思えるような表現の普遍性と共に大切にしたいのは、テキストの6ページに記載している「ポエムと歌詞の違い」です。具体的には、「イメージしている歌手が自分が書いた歌詞を歌った際、それを聴いたファンやリスナーが本当に共感できるか?」ということも視野に入れてみてください。たとえ、悲しい失恋の歌であっても、歌い手の魅力は損なうことなく、より魅力的に見えるのが理想です。

▼サビについて
サビの中で1番適切と思われる箇所にタイトルをはめて、それは動かさないようにしつつ、覚えやすく歌いやすいサビを模索していきましょう。必要と思えば、現状のサビを全面的にリライトしても構いません。また、タイトルの改題についても同様です。
※テキストの12ページ参照。
  
▼その他
「運命」「奇跡」と言ったドラマティックなワードは安易に使いがちですが、「なぜ、主人公にとって、そのワード(表現)が適切なのか?」という描写がきちんとなされていないと、リスナーの共感が得られません。現状の歌詞がNGということではなく、常にこの点を意識することで、より客観的に作品をチェックできるようになります。

以下に、生徒さんのツイートをご紹介します。


次回のレッスンでは、3曲目の課題曲を聴きながら、どんな歌詞を書くのか構想を練っていく「企画会議」をメインとして、リライトした歌詞のレヴューも行います。

歌詞の成長を楽しみに、提出を待ちたいと思います。

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歌に力を!

 

 
 
「大人のための作詞教室・爽塾」2023年前期のレッスンも7回目を迎え、後半戦に突入。
カリキュラム変更のため、半年で作詞に取り組む課題曲は以前の7曲から4曲に減らしましたので、受講期間のうちにできるだけ多くの歌詞を完成させてほしいところです。
今回も生徒さんのツイートも交えながら、今回のレッスンをレポートします。

まず、今回のメインテーマである、2曲目の課題曲の企画に取り組んでもらいました。「初めて曲を聴いた30分間で、どんな歌詞を書くのかを構想し、企画をまとめる」という爽塾ならではの、そしてとても重要なプロセスです。
今回の課題曲は、童謡のようなシンプルなメロディだった1曲目とはテイストが異なり、誰かを思うような優しさが全編に漂う「ラヴソング」な楽曲。まずは、30分程度、曲をリピート再生しながら、どんな歌詞を書くのかプランを練ってもらいました。その後、考えたプランを生徒さんに発表してもらい、それを元にディテールを詰めていきました。
結果、春に偶然出逢ったカップルが初めて迎えるクリスマスをテーマに、クリスマスソングに仕上げたいとのこと。初々しさが感じられる素敵なコンセプトだと思います。あえて大きな括りでハードルを挙げるとするなら、数多あるクリスマスソングと比較された時 に、「この歌にしかないフレーズや味」みたいなものがアピールできたなら、素晴らしいですね。
と書くと、「難しそう!」と思われる方がいるかもしれませんが、ご安心ください。爽塾のレッスンがめざすところは、どちらかと言うとビギナーの方が作詞のスキルを身につけることで、「音楽をただ聴くだけだった人」から「音楽作りの楽しさや大変さも分かる人。できることなら、生涯賭けて音楽の素晴らしさを追求する人」へステップアップするためのサポートをしていくこと、なのです。

さて、レッスンの後半では、前回、最初の講評を行った1作目の歌詞の再講評を行いました。初回の提出時には1コーラスしかなかった歌詞が3番の歌詞まで書き上げられ、フルコーラスになり、タイトルも変更され、かなりグレードアップしました。歌詞のテーマは「望郷の歌」。就職を機に育った場所を離れて生活していくことは多くの人が経験することですから、リスナーの共感を呼ぶにはその気持ちがいかにリアルに描けるかがポイントです。
以下、講評時にお伝えしたポイントを挙げていきます。

▼タイトルについて
この曲はJPOPにありがちな「A-B-C」形式でなく、「A-B-A-B」という形式なので、いわゆるサビらしいサビはありません。生徒さんが「A-B-C」形式の歌の詞を書き慣れている人なら、「4行分のサビの歌詞を1行分に要約するようなイメージで書いてみて」と伝えれば事足りると思いますが、今回に関して言えば、生徒さんが生まれて初めて作詞に取り組んで形にする処女作。なので、自分が書いたサンプルの歌詞を提示しつつ、まずは「自分が適切だと思う箇所にタイトルを入れてください」とお伝えしていました。それについては見事にクリアしていました。タイトルを、1番、2番、3番の同じ箇所に入れるだけで、「覚えやすさ」が向上して歌として体裁が整うのです。
改題された新しいタイトルそのものも、だいぶグレードアップしていましたね。ただ、タイトルに含まれた「愛」というワードが効くように、表現、描写を工夫することで、なぜ、「愛」というワードを使ったのかがリスナーの腑に落ちるようになります。シンプルなメロディゆえ、音数が少なく、それに連れて文字数も少なくなりますから、言うほど簡単なことではありませんが、ぜひここをクリアして欲しいところです。それがどうしてもできなければ、再度のタイトル変更を検討してもいいかもしれません。

▼ストーリーについて
綿密に練られたストーリーは素晴らしいと思います。修正を経て、3ページにもわたった企画の内容は濃密の一言で素晴らしいです。
ただ、主人公が、1番では東京にいて、2番では帰郷し、3番でまた東京に移動したという距離感の描写が曖昧なため、「都会にいて故郷を思い、帰郷してそのありがたみを再確認して、東京に戻ってまた故郷に思いを馳せる」というストーリーの骨子が描けていません。タイトル自体の底上げと共に、タイトルを含むlBパート最後の行の前半をリライトすることで、そこをクリアしましょう。
1作目のリライト版についての講評は、ざっとこんな感じでした。

以下に、レッスン終了後の生徒さんのツイートをご紹介します。
 



次回は、2作目の歌詞の講評をメインに、提出されれば1作目の歌詞の講評も併せて行う予定です。「新しい課題曲の作詞を優先して行う」のルールなので、「この作品は完成したので、これでOKです」と早々に○をもらわないと、未完成の歌詞がどんどん溜まってしまうのです。このタームから課題制作の数を以前の「7→4」と減らしていますので、できれば全作品を完成させて欲しいところですね。
以前学んだ生徒さんで、必ずフルコーラスの歌詞を提出していたのは数人ほどで、そのうち半数以上の歌詞を完成させたのは1人か2人ぐらい。かつてのハードスケジュールをこなしてくださった皆さんには感謝しかありません。この場を借りてお礼を言います。本当にありがとう(^_−)−☆!
このタームが始まってからは常々、「フルコーラス分の歌詞ができなくても、1コーラスだけでも、それが難しければ数行でもいいので、課題は必ず出してくださいね」と生徒さんにお伝えしてきました。それは、この先も変わりません。ただ、10日ほどの制作期間の間にフルコーラスの歌詞を書き上げることは先輩方の多くがなしとげてきたことなので、現在受講中のRuさんにも必ずできるはずです。


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※画像は、7月17日に渋谷の Club Rosso にて開催された田村信二さんのバンド「素晴らしき世界」のライヴの1シーン。コンポーザーとして確かな実績がありながら、現役ミュージシャンであり続けるフットワークの軽さが田村信二さんの魅力。踊って笑える楽しいステージを堪能しました!ご興味ある方、ぜひチェックを!

 
 

「大人のための作詞教室・爽塾」2023年前期、6回目のレッスンをレポートします・・・と、いつもの調子でブログを書き始めたいところですが、残念ながら、生徒さん欠席のため、今回のレッスンは中止になりました。
ですので、1曲目の課題曲に作詞された歌詞に対してメールで返した講評の内容を少々アップグレードしてお届けします。

以下、このターム1作目の歌詞に対する講評になります。

【企画について】 
▼企画の精度、完成度について
爽塾では、作詞に取り掛かる前に、書きたい歌詞の企画をまとめてもらうのですが、今回提出してもらった企画はディテールまでしっかりイメージがまとまっており、素晴らしいクオリティでした。今後もこれを継続してもらえればと思います。ただ、企画をまとめることに熱中し過ぎるあまり、作詞に割く時間が削られては本末転倒なので、企画書は2ページ以内ぐらいのボリュームで充分です。今回提出されたものが文字数オーバーではありませんが、念のため。

▼企画と歌詞の関係性について
企画と歌詞の関係性のことで伝えたいことは、企画はあくまでも歌詞という完成形の骨子であって、絶対順守しなければならないシナリオではありません。
伝え方が難しいのですが、企画をまとめた後は、考案したストーリーをそのままメロディに当てはめていくというより、ストーリーとメロディを擦り合わせていきながら、言葉やフレーズに煮詰まったりした時に企画に立ち返るというぐらいで充分です。

【歌詞について】
▼次回の提出時のタスク・言葉とメロディはちゃんとフィットしていますから、1作目にしては上出来です。
次回の提出時には、2番と3番もぜひ完成させてください。
▼タイトルについて
・タイトルは歌詞のテーマを象徴する大切なもの。サビの中なり、サビがないこの曲で言えばメロディの重要な箇所にはめ込むのが望ましいです。
・現状のタイトルは変えても構いませんが、このまま進めるのであれば、タイトルを歌詞のどこかに入れ、その行に歌詞のテーマを凝縮させるイメージで書いてみましょう。
 2番、3番も、1番と同じ箇所にタイトルを入れて、まずはその行を完成させましょう。
前回のブログにも書きましたが、サビがある曲であれば4行分ぐらいを使ってサビの歌詞が作れますが、そうではないタイプの曲ですから、「この歌詞で本当に言いたい、伝えたいメッセージを1行にする」イメージです。

【サンプル歌詞について】
ご参考までに、私が作詞したサンプル歌詞を送りますので、歌いながら味わってみてください。
・デュエットソングで、以下の通り、一人娘が嫁ぐ日の両親の気持ちを歌詞に託しました。
 1番:母親の心情
 2番:父親の心情
 3番:父と母、ふたりからのメッセージ
・注目ポイントは
 1番、2番、3番とも、Aの1行目の歌詞が同じこと。
これにより、歌い手の視点が変わっても、テーマ自体はブレることなくメッセージを伝えきれているのです。

閑話休題。

トータル12回のレッスンなので、早くも折り返し地点ですね。
このまま楽しみながら課題制作に取り組んでいくうちに「作詞をずっと続けていきたい、もっとうまくなりたい」という気持ちになれたら、きっと進歩も早くなるはず。

以下に、生徒さんのツイートをご紹介します。


 



次回は、2曲目の課題曲を聴きながら、どんな歌詞を書くのかという企画をプランニングしていきます。
併せて、今回、初回の講評を行った第1作の歌詞の2度目の講評も行います。
歌詞の確かな成長を楽しみにしつつ、提出を待ちたいと思います。


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「大人のための作詞教室・爽塾」2023年前期のコース、5回目のレッスンをレポートします。

幾度かの座学レッスン、ウォーミングアップとして用意した「替え歌制作」のプロセスを経て、いよいよ、この日のレッスンから、メインテーマである「田村信二さんの未発表曲に作詞していく」カリキュラムへと進みます。

最初の課題曲に選んだのは、シンプルでメロディの美しいバラード。1コーラスで1分少々のデモでは、作曲した田村さんご自身が「♪ラララ〜」で歌っています。メロディが聴き取りやすいことから、この曲を1曲目に選びました。

まずはじめに、約30分程度、デモをリピート再生してもらいつつ、構想を練ってもらいました。その間、このメロディに対して私自身が書き上げたサンプルの歌詞をいま一度チェックして、このタイプの楽曲の作詞に取り組む際の注意点などを整理、次のプロセスである「企画会議」と呼んでいる「ブレスト&コンサルティング」の準備を進めていました。

30分の「構想タイム」が終わった後、はじめに伝えたのは、この曲の構成がJ-POPによくある「A-B-C」という形式でなく、どちらかと言うと洋楽に多い「A-B-A-B」という形式であること。つまり、導入部分のAメロがあって、Bメロがあって、サビがあるようなJ-POPに比べるとメロディのパーツが少ないため、歌詞の構成もグッと凝縮してメッセージを伝える必要があるのです。例えば、「A-B-C」形式なら4行あるはずのサビの歌詞を凝縮して1行にするようなイメージです。その他のパートも然りで、トータルな音数が少ない分、たくさんの言葉を重ねていくような表現ができない分、しっかりとしたストーリーラインをパワフルでキャッチーな言葉で支えていくことも大切です。

さて、Ruさんが考案した歌詞のコンセプトをヒアリングしていくと、「上京して都内で働いてる女性が自然豊かな故郷を懐かしく思い出している様子」を描きたいとのこと。
その構想をもとに、前述の注意点も踏まえつつ、重要なポイントをあれこれとお伝えしました。さらに、ひとつのケーススタディとして、同じメロディに自分が作詞したサンプルの歌詞を例にとって、タイトルがメロディのどこにはまっているのか、そんなお話もしました。
メロディが短いこともあり、「3番まで作ってください」と指示しましたが、最初の提出時に1コーラス分しか完成していなくても、もっと短くても、もちろんOKです。
こんな感じの1限目が終わり、今日は休憩なしで2限目のレッスンへ。

前回のレッスンである程度形ができた「Scarlet」の替え歌制作、2度目の講評です。現状のところ、2番の歌詞は未完成ですが、1番の歌詞はきちんと形になっています。「私が手を貸しているとはいえ、この講座の本編にあたる『田村信二さんの楽曲に作詞する』というメインテーマに進む前のウォーミングアップの段階で、ここまでの歌詞が書けていれば立派なものです」という評価を伝えました。
こんな感じで、今回のレッスンは終了。

次回は、今回構想を練った歌詞の講評とリライトのためのアドバイスをじっくり行なっていきます。
どんな歌詞が紡がれるのか、どんな歌が生まれるのか、提出を楽しみに待ちたいと思います。

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歌に力を!

 

「大人のための作詞教室・爽塾」2023年前期のコース生も4回目のレッスンを終えました。生徒さんのツイートも交えながら、今回のレッスンをレポートします。

今回のレッスンを終えると、全体のカリキュラムのちょうど 1/3を終えることになるので、これまでをざっと振り返ってみましょう。
レッスンの滑り出し、初回の3回はこんな内容でした。

▼1回目 : オリエンテーション、コンサルティングと目標設定。
 ※今回の生徒さん、Ruさんはビギナーということもあり、「最低でも○曲完成させましょう」といった数値的な目標は定めませんでした。
▼2回目 : 作詞法(1) 〜作詞概論、企画・着想〜
▼3回目 : 作詞法(2) 〜作詞の実際、替え歌制作企画会議〜

と、こんなプロセスを経て迎えた4回目のレッスンでは、いわゆる『座学』の締めくくりに「表記上のルール」の説明を少々。歌詞のレイアウトに関するルールや課題提出時の注意点などのお話をしました。「ちょっと面倒」と思うかもしれませんが、ルールのそれぞれに効率アップのための必然性があります。ですので、生徒さんには順守していただければ幸いです。

少々の休憩時間をはさんで、2時限めのレッスンへ。

さて、本日のメインイヴェント、予定より前倒しして制作をスタートしてもらっていた課題、替え歌制作の講評を行いました。替え歌の元歌は、教材のCD『虹』に収録された「Scarlet」。原曲の歌詞では、女性目線で「かつての恋人との2年ぶりに再会とリスタートして始まる新しい恋への期待」がロマンティックに描かれています。前回のレッスンの企画会議では、Ruさんが選んだ『元歌へのアンサーソング』というテーマに添ってコンセプトのディテールを固めていきました。

今回のレッスンでは、前回考えた「歌詞の企画、コンセプトがどれだけ実際の歌詞に落とし込めているのか?」というポイントで歌詞をチェックしていきました。提出にあたって繰り返しお伝えしていたのは、「たとえ未完成でも、1行しか書けなくても、締め切りまでに書けたものを提出してください」ということでした。替え歌というスタイルで多少ハードルは下げているとは言え、生まれて初めて取り組む作詞なのですから苦労して当たり前。いや、むしろ、自分の思いの丈を込めた1編の歌詞を独力で書き上げることが受講期間の切実な目標なのですから、最初のトライアルは「苦労したけど、何行かはメロディに載せて言葉を紡げた、歌詞らしいフレーズが書けた」くらいの達成感があれば充分なのです。

このクールでは初めて生徒さんの歌詞のチェックをすることになるので、少々ドキドキしましたが、提出された初稿は未完成の箇所こそあれ、考案したストーリーに添ってきちんと歌詞の形を成していました。真摯に作詞に取り組んだことがフレーズの端々から充分に伝わってきましたので、生まれて初めての作詞という視点で言うなら及第点と言って差し支えありません。

今回実現した、「講師の私が主導して作詞のリライトをその場で手取り足取り行う」レッスンというのは、実は「爽塾」始まって以来、初の試み。実施にあたって私が心がけたのは、「生徒さんの作品を自分の作品だと思って、修正、リライトを行う」ということでした。
では、具体的にはどんなことをしたのかと言えば、至らない部分はテキストで説明した内容を反芻しつつ、実際の修正、リライトを行なっていきました。
例えば、企画書にはなかったワードがなぜタイトルになっているのかをヒアリングし、サビの歌詞と連動させつつ修正。
メロディと歌詞がフィットしていない箇所があれば、どんなフレーズならフィットするのかを実例を交えて歌いながら底上げのプロセスを示し、修正を行うといった具合です。

一度書いたものを客観的な視点でチェックして、リライトを繰り返し、完成と向かっていく。小説やエッセイ、その他あらゆるスタイルのテキストにも同様のことが言えると思いますが、「直すことは当たり前で、完成に向けていかに適切に直すか」が大切なのです。
初めてのトライながら、生徒さんのリアクションを見る限り、「手取り足取りの歌詞のリライト実体験レッスン」は目指すハードルを何とか超えられたような手応えがありました。

以下、生徒さんの感想Tweetです。


次回は、いよいよ、田村信二さん作曲による最初の課題曲を聴きながら、どんな歌詞を書くのかという企画をプランニングしていきます。
併せて、今回、初回の好評を行った替え歌の歌詞の2度目の講評も行う予定。歌詞がどれほど成長したのかを見るのがとても楽しみ。


Power to The Songs!

歌に力を!


リライトの末、完成した生徒さんの歌詞を初稿のレビューと共に公開します。
双方を比較してみると、歌詞のクオリティが上がったのがわかります。
※修正された箇所は赤字、講師からのコメントは文字色をグリーンにしています。

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↓原題と同じ意味の英語タイトルに修正して良くなりました。
MUDDY LOVE 
 
作詞:沢村正一 
作曲:田村信二

1A)
 初めての口づけに 愛しい熱を初めて知った

1B)
 ↓ヒロインのキャラ、2人の関係性が端的な描写されていて良いと思います。
 右の手首 残るCross  
 醜い傷跡 抱きしめて 

1C)
★泥のように 闇に溶けて
 君と混じり合い 沈んでいくの
 ずっと孤独だった 私のこと
 顔も声も 赤のシャドウも 愛して
 ↑ここも初稿より良いです。
2A)
 夏近いキャンパスで 独(ひと)りの私気づいてくれた
                     ↑字余りにつき、下線を引きましょう。
2B)
 「コミュ障なの? 俺も一緒」
 遊びも本気も知らぬまま 

2C)
 泥になって 君を汚(けが)し
 二人で堕ちてく 心も捨てて
 もう逃げないでね 笑っていて
 顔も声も 青い髪も 愛して
      ↑この修正で、初稿チェック時の疑問が解決しました。
3C)
★Repeat

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【総評】

■印象
・初稿提出時に投げかけた疑問がほぼ解決し、これにて完成とします。
・「横文字(英語)のフレーズは英語として発音する」のが昨今のJPOPの趨勢ということを思えば、1B)の1行目の「Cross」はカタカナ表記がふさわしいのですが、カタカタの「クロス」は「十字架」ではなく「布地」という意味に取られる可能性もあり、ここでは現行のママでOKとします。

以下に、初稿とレビューを転載します。
※秀逸な表現は青字にしています。

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泥愛 ←読み方不明なので、ルビを入れてください。

作詞:沢村正一
作曲:田村信二

1A)
 初めての口づけに 愛しい熱を初めて知った

1B)
 青い髪と胸のTATTOO ←これは、ヒロインの相手の描写で合ってますか?
 私の身体に刺す月光(げっこう)

1C)
★泥のように 闇に溶けて
 君と混じり合い 沈んでいく
 ずっと孤独だった 私のこと
 顔も声も 傷も痣(あざ)も 愛して ←かなり内向的なヒロインの設定ですが、傷や痣の由来は?


2A)
 夏近いキャンパスで 一人の私気づいてくれた
  「一人」は↑「独り」の方がいいかも?

2B)
  「コミュ障なの? 俺も一緒」
  遊びも本気も知らぬまま

2C)
  泥になって 君を汚(けが)し
 二人で堕ちてく 心も捨てて
 もう逃げないでね 笑っていて←ヒロインにこう言わせた伏線は?
 顔も声も 滲む血さえ 愛して
 ↑1Cの同箇所と同様の疑問を感じました

3C)
★Repeat

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【総評】

■印象
歌詞の世界観はよくまとまっており、普通のアマチュアレベルなら、この作品にあれこれ言う人はいないでしょう。ただ、爽塾はスキルアップの場ですから、以下の通り、底上げが可能なポイントをお伝えしていきます。

■修正希望点
1)タイトルについて
造語かと思いますが、読み方は「どろあい」ですか? 
「どう読むんだろう?」と思う人が大半かと思いますので、ルビを入れてください。タイトルとしての可否ですが、仮に「どろあい」と読むとして、そのまま歌詞に入れても意味が分かりづらいところが今ひとつかなと思います。同様のストーリーの小説であれば問題ないのですが、歌詞の場合、1コーラスなら1分ちょっとで歌が終わってしまうため、それまでにリスナーにインパクトを与える、要は少しでも印象に残るかが勝負です。それを踏まえて、「テーマは変えずにタイトルを改変」することができるか、ぜひトライしてみてください。
2)サビのディテール
1Cの4行目に「傷も痣(あざ)も愛して」とありますが、企画書で設定されたヒロインのキャラだと「ほぼ引きこもり」状態なので、微妙な違和感を感じます。2Cの「滲む血さえ」という表現も同様で、いずれも、この恋に出会うまでに、そこそこ壮絶な人生を歩んできた人間でないと、今ひとつフィットしない感じがするのです。それよりもむしろ、まったく恋愛音痴で男性に免疫のない女性が初めて男性を知ることの恐れやドキドキ感、気持ちの昂まりなどをここで表現する方が当初の企画に見合う歌詞になるかと思います。2Cの3行目の「もう逃げないでね 笑っていて」という表現も、前項同様、企画書のキャラ設定から微妙にずれている気がします。こう言うからには、過去の恋愛で相手に逃げられた経験があるのだろうと思うのが自然ですし、相手に「笑っていて」と懇願するなら、辛い恋の果てに(本作に描かれた)新しい恋に出会ったことを示唆しているように思われてなりません。企画と歌詞との間にズレが生じたのは、前回のレッスン後に年齢設定などについて私が再考を促した影響もあるのかもしれませんが、せっかくまとめた企画ですので、企画に添ってリライトをお願いします。ライターの仕事もされている沢村さんに分かりやすくお伝えすると、企画書にまとめた内容はライターの仕事で言えばクライアントからの発注内容のようなものです。「こういう趣旨の企画に添って、〇〇の紹介記事を書いてください。○月に公開するので、季節感を踏まえたライティングをお願いします」という指示であれば、そのオーダーにフィットするようにテキストをまとめていきますよね。ここでの企画の起案者は自分自身ですが、自分でまとめたアイディアを第三者からのオーダーだと捉えると、企画と歌詞の乖離や微妙なズレが防げるように思います。

>沢村さん
 爽塾で書いていただいた歌詞、いずれも世界観がしっかりあって力作揃いです。
 ぜひとも完成させてくださいね。
 リライトした歌詞の提出もお待ちしています!

Power to The Songs!
歌に力を!

 

 

「大人のための作詞教室・爽塾」2023年前期のコース、生徒さんのツイートも交えながら3回目のレッスンをレポートします。

「そもそも、歌詞とは何ぞや?」という作詞概論をお話しした前回のレッスンから一歩進んで、今回は「作詞の実際」と題して、以下の通り、作詞の実際、テクニック的なことをテキストに添ってお話ししました。

1)サビの歌詞の作り方 
2)Aメロの歌詞の作り方 
3)Bメロの歌詞の作り方 
4)その他のパートについて 
5)2番以降への展開について 
6)タイトルの重要性 
7)グレードアップのための工夫あれこれ 
8)チェックとリライト 

たかだか1時間の講義を聴いただけで作詞のあれこれが完全にマスターできる訳ではありませんが、今回のレッスンは、実際の課題制作に進んだ後、「ここはこう直した方が効果的です。テキストのココを見直して」と振り返るための『指標』という意味合いもあるのです。

ここまででレッスンの前半を費やし、次のコンテンツ「替え歌制作の企画会議」へ。
このクールの新しい試みとして、本来なら、今回のレッスン後に初めて、「この歌の替え歌の歌詞を書いてみましょう!」と出すはずだった課題を予定を前倒しして進めてもらっていました。ですので、その進捗確認と企画の仕上げを行いました。ちなみに、替え歌の元歌となるのは、教材のCD『虹』に収録された「Scarlet  / 金子知里」。日本クラウンからメジャーデビューした知里さんのインディーズ時代の貴重な音源です。メジャーデビュー後にもコンサートやご自身のテレビ番組で歌ってくださったナンバーで、作詞とプロデュースを手がけた自分にとっても思い出深い曲です。
替え歌制作を進めるにあたり、以下のようないくつかの選択肢を挙げて、方向性を定めてもらっていました。

1)原曲の歌詞の続編的なストーリーを展開させるパターン
2)原曲の歌詞とは対になるストーリーを描く「アンサーソング」
3)原曲の歌詞の世界観はリセットして、まったく異なる歌詞を一から描く

以上の選択肢から、Ruさんが選んだのは、2)の「アンサーソング」でした。
まずは、企画の進捗を確認。さらにプランが煮詰まっていないところを話し合いながら、イメージをより具体化していきました。
こうやって、「コンサルティング形式で『どんな歌詞にするのか?』を講師と生徒さんが話し合いながら固めていく」というプロセスは、カリキュラムの改変をおこなったこのクールからの新しい試み。企画があやふやなまま、作詞に取り組んでも迷走するのは明らかなので、歌詞のクオリティをより上げるために思いついた施策です。
結果として、元々のプランがかなり色彩豊かに、イメージはより具体的になったのではないでしょうか。替え歌制作とはいえ、作詞には違いないので、仕上がりが楽しみです。とはいえ、この段階で重要なことは、まず「メロディに言葉を乗せる作詞って楽しい!」と感じてもらうことなので、そこは入念に伝えました。生徒さんに繰り返し言っていることは、「1番の歌詞しか仕上がらなくても、それで充分。たとえ1行しか書けなくてもOK。とにかく提出してくださいね」ということです。

最後に、指定された楽曲のPRコメントを考案する課題のチェックを行いました。元々は「レコード会社の宣伝担当の目線で」というテーマだったのを「ラジオ番組のDJの原稿を作るイメージで」と変更して再提出してもらったのです。提出された課題はきちんとラジオ番組のスタイルで仕上げられていました。そこで、実際のラジオ番組風にメールのテキストをリアリティのある内容で加筆し、「その楽曲のどこがどういう風にリスナーの心を動かして、リクエストメールを書くに至ったのか」という点を明確化し、それを説明しました。
次回の替え歌制作の課題はビギナーの方にはそこそこヘビーなので、「PRコメント考案」の課題はお休みです。

最後に、Twitterにアップされた生徒さんの感想コメントをご紹介しますね。

いよいよ、次回は、「替え歌制作」の課題のレビューを行います。今回のRuさんのようにまったくのビギナーの方の場合、「1行でも書けたら御の字ですよ」という気持ちは一貫して変わりません。どんなフレーズが生まれるのか、楽しみに提出を待ちたいと思います。

Power to The Songs!

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