爽塾ブログ

私こと、吉里颯洋がオンラインにて主宰している「作詞教室・爽塾」。

意図していた訳ではないのですが、2024前期4回目のレッスンは、「替え歌制作」というカリキュラムの一環で生徒さんが途中まで書いていた歌詞を講師の私が仕上げるという爽塾のささやかな歴史では初めての「コラボ作詞」的な内容になりましたので、その作品をご紹介します。

現在、継続受講中の生徒さんが書きかけていたこの作品をこのタイミングで完成させたのは、カリキュラムのスケジュール上、次回のリライトに着手するタイミングまで時間が空いてしまうため、プロデューサー視点で底上げすべき箇所をリライトして、いったん完成させたというのがその経緯でした。

 

「替え歌制作」の意図、効用とは・・・

半年間に12回のレッスンを行う爽塾のカリキュラムでは、作詞に関する座学を数回行った後でいきなり曲先作詞に取り掛かるのではなく、その前段階として、「替え歌制作」の課題に取り組みます。このカリキュラム実施のメリットは、歌詞のついていないインストゥルメンタルの課題曲のメロディを聴き取る手間が省けること。もちろん、替え歌と言えども、「どんな歌詞を書くか」という企画のプロセスはありますが、「メロディを幾度も聴いてその骨格を把握して・・・」という曲先作詞の最初のプロセスをはしょれるのは作詞ビキナーの方にはメリットです。聴き慣れた曲であればなおのこと、歌詞のテーマさえ決まれば、すぐに作詞に着手できるので、「とりあえず、曲先作詞をやってみたいけど、どこから始めたら良いか分からない」という方には、「替え歌制作」はおすすめの作詞ドリルと言えるでしょう。

 

女性の燃える恋心に応える男性心理は・・・

替え歌制作の課題曲は、教材に使っている自分のレーベルのアルバム『虹』の収録曲から選んでいるのですが、今回は「2年ぶりの再会を機に、かつてのラブストーリーが再び始まる」という女性目線の「Scarlet」の歌詞を相手の男性の視点で書くアンサーソングを書くという試み。「真っ赤に染まる夕景のシーサイドで、運命の赤い糸に導かれるように恋がリスタートするヒロインの恋心」と対をなすように、生徒さんが9割がた仕上げていた歌詞に加えたのは「今度こそ、空より高い、海より深い紺碧の愛で君を愛する、守っていく」という男性の強い気持ちです。「Scarlet」同様、タイトルが示すテーマカラーが聴き手のイメージを刺激するよう、青に絡めて描きました。ちなみに、タイトルの「TRUE BLUE」には、文字通りの「真に青く」という意味以外に「真に忠実な、信頼できる。 語源は、宗教改革時代 、スコットランドのカルヴァン派(Presbyterian)が青をシンボルカラーにしたことから」という意味もあり、これはまさに「一度別れた後で再びめぐり逢えた彼女を強い気持ちで守ってゆく」という彼の強い気持ちに呼応したダブルミーニングとなっています。

※「Scarlet」は、講師の吉里颯洋が主宰するレーベル「 Songs On the Web 」から2009年にリリースしたアルバム『虹 / The Best of Songs On the Web Vol. 3」の収録曲。
日本クラウン所属のシンガー・知里さんがメジャーデビュー前に本名の金子知里として歌ってくれたバラードで、メジャーデビュー後もコンサートで歌われるなど、ファンの方からの人気も高い楽曲です。

※以下、赤字の箇所が私がリライトした歌詞です。

TRUE BLUE

※原題:Scarlet

作詞:kotonoha                                     

作曲:高橋浩平

 

1A)

 11月の海辺のカフェで  

 2年ぶり聴く声 心震えてる  

 「逢いたかった」と ささやく声に  

 あふれ出す愛しさは 胸のトパーズ  

 

1B)

 海の向こうでずっと 君を感じてた  

 

1C)

 Yes, my love’s shining so true blue  

 繋いだ手と手 そっと 二度と離さない  

 あぁ 愛は澄んだ青  

 紺碧(こんぺき)の空より高く・・・  

 羽ばたこう明日(あす)へと 風に乗って まっすぐ  

 

 

2A')

 「新しい恋 始めないか?」と 

 問いかけて込み上げる 深い想いが  

 

2B)

 清らかなまなざしを この手で守りたい  

 

2C)

 Yes, my love’s shining so true blue  

 やっと気づい 帰る場所はだけと  

 あぁ 愛は澄んだ青  

 紺碧(こんぺき)の海より深く・・・  

 信じてた 僕らの絆はまだ続くと  

 

2C')

 見つめた瞳 そらさずに  

 幸せな未来を 引き寄せよう必ず  

 ふたりきり今夜は 熱いキスでお祝いしよう 

 

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初稿の段階でこれぐらいのレベルの歌詞が書ければ、プロに近いレベルですね。

さて、次回のレッスンでは、新しい課題曲を聴いて、どんな歌詞を書くのかをプランする企画会議を行います。

受講生の方は未完成の歌詞はどんどんリライトを進めて、提出してくださいね。力作が届くのを待っています。

 

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知里さん、新曲『シークレットラブ / 夢陽炎』リリースおめでとうございます!

私こと、吉里颯洋がオンラインにて主宰している「作詞教室・爽塾」。

生徒さんの声も交えながら、2024前期3回目のレッスン・レポートをお届けします。

1限目の内容は・・・

「作詞の実際」と題して、座学の2回目の講義でした。

主な内容は以下の通りです(一部抜粋)。

0)タイトルの重要性
1)サビの歌詞の作り方
 ・サビの条件とは?
 ・作り方のポイント 

この項は、このターム初回のレッスンでのコンサル時に、今後の半年で生徒さんに克服してもらいたいテーマとして掲げた内容とズバリ一致するので、いつにも増して力を入れてお話しました。端的に言えば、「曲のテーマが効果的に集約され、覚えやすく、口ずさみやすい」のがサビの歌詞の条件になりますが、これをいかにして作るか?となると、一筋縄ではいきません。生徒さんの好きなアーティストの作品を実例としてピックアップしてレクチャーしたので、「なるほど!」と思ってもらえたら良いのですが。ただ、作詞におけるサビの作り方は最重要項目の1つとも言えますから、生徒さんにはテキスト改訂で加筆された箇所を課題の提出時には読み返していただき、このハードルをクリアして欲しいと思います。その後は、歌詞の他のパーツの作成についてのお話。

2)Aメロの歌詞の作り方
3)Bメロの歌詞の作り方
4)その他のパートについて
5)2番以降への展開について
6)グレードアップのための工夫あれこれ
 「英語のフレーズを効果的に使う」という項目では、先々、英語のフレーズも必要に応じて使えるように、こんなアドバイスもしました。

「そもそも、英語のフレーズなんて思いつきもしない」というレベルなら、まずは、日常的に洋楽を聴きながら英語のフレーズになじんでいくところから始めるのがおすすめです。さらに言うと、聴いてるだけでは身につかないので、歌詞を見ながら歌うのが手っ取り早いですね。自分もBruce Springsteenの名盤の数々を聴きながら歌い、歌いながら聴くことを繰り返した時代がありました。

ちなみに、「サビの歌詞の作り方」でふれた「『数回あるサビの歌詞がすべて同じ』という名曲は存在します」というお話ですが、私が思い浮かべたのはこの曲。レッスンの最中にはお話しませんでしたが、ネタバレ、種明かしですね(笑)。ブルース・スプリングスティーンの「Hungry Heart」と言えば、スタジアムでのライヴなら5万人のオーディエンスの大合唱となる超名曲。幾度もリピートされるサビの歌詞は、誰もが歌いたくなる、叫びたくなるのにふさわしい普遍性のあるメッセージが込められています。


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2限目の内容は・・・

 まずレヴューしたのは、4度目の提出となる女性目線のラヴソング。このターム初回のレッスンで生徒さんに提示した「歌いやすく、覚えやすく、テーマを凝縮した強力なサビを作る」という今期のテーマに従って、だいぶ育ってきた歌詞をチェック、こんなコメントを伝えました。
 ・1番のサビについては、彼の人物像、設定を掘り下げたことで、素晴らしい完成度になりました!
 ・3番についても、概ね良い感じにまとまっています。
 ・2番のサビは、レッスンでお話しした通り、彼女のセリフでなくても良く、「うれしすぎて言葉が出ない様子」を描写しても良いかもしれません。
  ※曲先作詞で大切なのは、「メロディを尊重し、メロディに寄り添うこと」であって、「何が何でも企画書の内容をメロディに乗せること」ではないのです。企画書にまとめた内容からサビのフレーズが紡ぎ出せない場合は、改めてメロディと対話しながら、ベストな表現を模索しましょう。

続いてレヴューしたのは、さまざまな内容のスペシャルメニューを消化した後で制作を再開した「35歳にしてなお、東京でメジャーデビューの夢を追う男の歌」。生徒さんの実像やこれまでの作品からするとかなり遠い世界のお話でしたが、まずは、歌詞の世界観をリスナーにプレゼンする役割を担う冒頭の2行が形になったので、それについて言及。お伝えしたのは、こんなメッセージでした。
「導入にあたる1Aの2行が書けて、未知の世界への最初の1歩が踏み出せましたね!企画書のマーカーの箇所をトリガーとして、Bメロとサビのベストなフレーズを模索していきましょう!」

続いて、テキストには未掲載の㊙️ネタとして、自分から見て距離があるキャラクターを描く時のコツなども伝授。受講生の方は、いずれかの機会にお役立てくださいね。

さて、次回は幾度かトライしながら、まだ完成に至っていない「替え歌制作」のレヴューを行います。半年前に挑んだ際よりもスキルアップしている生徒さんが見せてくれるはずの成長ぶりに期待したいところです。

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※写真下)店名を失念しましたが、大好きな京都でいただいた好物のおはぎ。見たこともない色味の真ん中のおはぎを見て、ハッとしました。マンネリに陥ることを良しとしない創意工夫の素晴らしさを感じました。ジャンルは違えど、大いに見習いたいところです。

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私こと、吉里颯洋がオンラインにて主宰している「作詞教室・爽塾」。

生徒さんの声も交えながら、2024前期2回目のレッスン・レポートをお届けします。

1限目の内容は・・・

このターム2回目のレッスンは、作詞に関する座学の初回。
「作詞法(1) 〜作詞概論、企画・着想〜」というテーマで、レクチャーを行いました。主な項目は以下のような内容でした(一部抜粋)。

▼歌づくりのその前に 〜作詞概論〜
 1)名曲の条件とは? 〜ビギナーでもココをめざそう!〜
 2)ポエムと歌詞の違い
 3)詞先作詞と曲先作詞の違い
 4)曲先作詞のプロセス

▼着想から企画へ
 1)なぜ、このプロセスが大切なのか?
 2)このプロセスを重要視する意味とは?

受講されている生徒さんには通算で3度目になる講義ですが、これまで取り組んできた創作活動と照らし合わせて、少しでも新鮮に感じられるところ、発見があれば幸いです。

2限目の内容は・・・

短い休憩をはさんで、2限目のレッスンでは制作途中の課題のレビュー(講評)を実施。2回のリライトを経て、「年下の素敵な男性からプロポーズされるヒロインの心情を歌ったラヴソング」は、完成度70%ぐらいに成長。最近は、「3度目の提出でクオリティがグンとアップする」ことが続いているので、次回からは初稿からこのレベルを期待したいところです。そう願いつつ、こんなコメントをお伝えしました。

【講評】
・2度のリライトを経て、ぐっとクオリティが上がりました!完成まであと少しです!
・1番のサビで彼のプロポーズを、2番で彼女からの返事を、3番で2人の気持ちを歌うというアイディアは秀逸です。ぜひ完成させて、代表作にしましょう。

結婚を諦めていた女性に理想の恋が舞い降りるプロポーズ・ソングは需要がありそう。

レッスン後、生徒さんとこんなやりとりがありました。

試行錯誤の一環ですが、実は、以前とは課題曲の選び方を変えるようになっていて。「タームの始まり前に4曲を選んでおく」スタイルから、「生徒さんの成長具合に合わせて、その都度、選曲を行う」ようにしています。

さて、プロポーズ・ソングは、いつ、どんな形で完成するのか、今回提出がなかった「メジャーデビューを諦めない男のストーリー」は、有楽町の朝もやの中からついにその姿を表すのか(笑)、次回のレッスンが楽しみです。

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※写真下:レッスンの前日(4/21)、NHKホールにて、ストリート・スライダーズのライヴを体験。日本語で歌われる骨太なロックンロールは今の音楽シーンでは超貴重な存在。作詞家を志す方は、「いつか自分の作品が大きなホールで歌われる!」とイメージすると良いですよ!f:id:sowyoshizato:20240508071313j:image

 

 

 

私こと、吉里颯洋がオンラインにて主宰している「作詞教室・爽塾」。

生徒さんの声も交えながら、2024前期初回のレッスン・レポートをお届けします。

1限目の内容は・・・

個人で主宰するささやかな当塾ですが、熱心に受講してくださる生徒さんに恵まれ、無事に新学期が迎えられました。現在受講中の生徒さんが爽塾で学び始めたのは1年前なので、半年間のタームのレッスンを2期終えて、この春からのタームが3期目になります。爽塾の半年間のカリキュラムは、最初の数回は座学で作詞のハウトゥーを学び、4回目で替え歌制作の課題をレヴュー(講評)を行い、以降は「課題曲を聴いてどんな歌詞を書くのかを決める企画立案」→「書いた歌詞のレヴュー」を繰り返しつつ、半年間に4曲の課題曲と向き合う実践を重ねるという内容。テキストはタームごとに若干の改訂を行いますが、ベーシックに当たる部分は同じです。ですので、生徒さんには座学のたびに同じお話を聴いてもらうことになります。実践経験を積んでいる分、講義の内容は同じだとしても「あ、なるほど!」と気づきが増えていくことを祈りつつ、今回もまた、テキストの前書きの部分を読み上げました。

大人のための作詞教室『爽塾』へようこそ!
ご縁あって、これからの半年間、作詞という歌づくりの大切なスキルと向き合いながら、皆さんと歌づくりのセッションができることを心からうれしく、誇らしく思います。爽塾で学ぶのは、実際の音楽制作の現場でニーズがある「曲先(きょくせん)作詞」です。なぜ、「曲先作詞」のみに注力するのかは後述しますが、これはやればやるほど奥深く、そして楽しいものです。
さて、なぜ、私が爽塾の活動を始めたのか? その経緯を少しお話ししてみたいと思います。皆さんに教材としてお渡しした主宰レーベルのCD制作を通じてアマチュア作詞家の方をディレクションする機会が度々あり、実際に仕上がった作品が着うたサイトなどでヒットするうち、「自分自身は発展途上とは言え、これまで身につけた作詞のスキルは、それを必要としているアマチュアの方には十分に価値があるのでは?」と思ったことが、爽塾スタートのきっかけです。
そして、こうも思ったのです。「どうせなら、かつて私自身が専門学校で2年かけて学んだことを半年で伝えよう。自分がアマチュアだった頃に受けたかったカリキュラムを実現しよう」と。

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と前置きしたのち、今回のメインテーマである「コンサルティング」を行いました。作詞をやり慣れている生徒さんなら、「課題曲4曲のうち、最低3曲分は完成させましょう!」といった感じでシンプルに終わるのですが、2回にわたって継続受講をしてくださった生徒さんには今よりもさらに大きく歌づくりの才能を開花させて欲しいので、「テーマをギュッと凝縮した、歌いやすくて覚えやすいサビを作る」という明快な目標を設定しました。歌詞の背景にあたるストーリー、登場人物の人物設計を構築することにかけてはすばらしい成長を見せてくれている生徒さんなので、より深く作詞の核心部分へと踏み込んで、「歌詞を仕上げる、歌を作るってこういうことなのか」という手応えを感じてもらえればと考えています。と、簡単に書きますが、それ相応のハーヴェストを得てもらうには講師の自分が鋭意努力せねばなりません。

2限目の内容は・・・

前のタームから続いている未完成作品のレヴューを実施しました。

まずは「年下の素敵な男性からプロポーズされるヒロインの心情を歌ったラヴソング」では、Aメロ、Bメロで描くべきストーリーに関する描写がサビの歌詞にまではみ出しているような印象でしたので、「サビの歌詞とはどうあるべきか?」というお話を実例を示してじっくりとお伝えしました。

そして、爽塾始まって以来の「スペシャルメニュー(前回のレッスンの記事参照)」を実施して取り組んでいる「35歳にしてメジャーデビューを目指すロックシンガーの物語」については、主人公が都内新宿区に住んでいると仮定して職場がある千代田区有楽町近辺まで行き来する間に目にするであろう東京の風景をあれこれピックアップしてもらいました。生徒さんの実像からは少々距離がある、歌詞の主人公がリアルに感じられたところで、いよいよ作詞にリトライしてもらうことになります。

1回で仕上がらずとも一向に構わないので、「見知らぬ海外に旅に出てみよう」というぐらいの気軽さで、異性の気持ちで異世界を描ける作詞の楽しさを味わってもらえればと思います。完成の暁には、これまでとは一味違う達成感が味わえるはずです。

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※写真下:所沢市内某所の夜桜。ギリギリセーフのタイミングで見られました。

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私こと、吉里颯洋がオンラインにて主宰している「作詞教室・爽塾」。

生徒さんの声も交えながら、2023年後期12回目、このターム最後のレッスン・レポートをお届けします。

 

1限目の内容は・・・

「課題曲の歌詞の企画をレッスンで固めて」→「歌詞と企画書を提出」→「次回のレッスンで講評を行う」という通常のプロセスとは異なる、スペシャルメニューの課題制作を行なっている某作品の課題を講評しました。 生徒さんが企画した「30代半ばにして『シンガーとしてメジャーデビューしたい』という夢を抱え上京した」という歌詞のストーリーは秀逸ながら、歌詞の世界観や(おそらくロック好きだと推測される)主人公の心情などが生徒さんご本人からかなり距離感があるため、以下のようなスペシャルメニューを組んでみた次第です。

1)歌詞の主人公のリアルな心情を味わってみる

まず、野心家である歌詞の主人公のリアルな心情に寄り添い、共感することを目標に、『夢を追う主人公が自分を励ましつつ愛聴するロックンロール集』というコンセプトで10曲入りのプレイリストを講師の私が作成。生徒さんにはそれを聴いてもらい、「主人公がそれぞれの曲のどこに共感しているのか、彼のお気に入りのフレーズを抜き書きする」という課題に取り組んでもらいました。これについては、前回のレッスンで講評しました。

2)歌詞の主人公になりきり、彼が主催するライヴを企画する

今回取り組んでもらった課題は、「主人公になりきってプレイリストの中から選んだ5曲と、主人公のオリジナル曲という想定でこれから作詞する課題曲をミックスして、合計6曲からなる架空のライヴのセットリストを作成せよ」というもの。「あり得ないほど、ロックンロールな課題で素晴らしい!」と自画自賛しそうになりましたが(笑)、生徒さんが考案したセットリストは、こんな感じでした。

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■ライブタイトル :見果てぬ夢 〜俺達の戦い〜

●セットリスト
01 : 勝利への道 / 浜田省吾さん
02 : 終わりなき疾走 / 浜田省吾さん
03 : Someday / 佐野元春さん
04 : 年甲斐ない 関係ない 限界なんてない / 矢沢永吉さん
05 : 黒く塗りつぶせ / 矢沢永吉さん
06 : 見果てぬ夢 / アーティスト名(生徒さんが歌詞を構想中の楽曲)

※︎ライブのタイトルは「俺達の明日(あした)」または「見果てぬ夢」と迷いましたが、最後に自身の曲を歌って揺るがない決意と想いを観客に伝え、「一緒に夢に向かって頑張っていこう!必ず夢を掴もう!」という強いメッセージで締めくくりたいと思い、ライブのタイトルも曲名と同じものにしました。

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自分の講評は「素晴らしいシークエンス(曲順)で文句のつけようがありません! ゴールまでまだ距離がありますが、完成させられると新しいドアが開くはずです」というもの。そして、このスペシャルメニューの最後に出した課題は、以下のような内容。

3)主人公の視点で東京の街をスケッチ(描写)してみる

彼が暮らすエリア(都内新宿区近辺を想定)から働いているバー(都内千代田区有楽町近辺を想定)にかけての行動範囲で目にする街の風景などをピックアップして企画書に追記せよ。

これについては、次回のレッスンで講評を行います。

2限目の内容は・・・  

短い休憩を挟んで、歌詞のレヴュー(講評)を行いました。

前回のレッスンで企画会議を行い、「プロポーズされた36歳の独身女性が、結婚を決意する心境を描きたい」というコンセプトを固めたバラードの歌詞の初稿は、残念ながら未完成。そこで、生徒さんがまとめた企画書の中から、この作品ならではの秀逸なフレーズ、表現をピックアップして、実際の歌詞に活かすようアドバイス。自分がまとめた歌詞の企画、ストーリーを客観的に見直すのは難しいかもしれませんが、企画書の中から「自分ならではのフレーズ、このストーリーならではの独自ポイントを見つけ出して、歌詞に盛り込む」ことが大切。今回で言えば、自分が企画書にマーカーをつけた箇所が該当箇所なので、次回からはそれを自分で見つけ出すようにしましょう!ここは重要なので、生徒さんはメモしてください(笑)。

お楽しみの打ち上げは・・・

そして、本日のメイン・イヴェントは、各タームの最終回のレッスン後にしか実施しない「打ち上げ」。対面のレッスンならばお洒落なカフェにでも移動して楽しく歓談するところですが、オンラインレッスンのため、パソコンの前にお茶菓子を用意して生徒さんとお話ししました。レッスンではなかなかお話しできないことや、生徒さんが田村信二さんと面会できた時のエピソード、音楽業界のあれこれとか、無礼講なお話も少々。短い時間でしたが、貴重なひとときでした!

以下、生徒さんのコメントをご紹介します。

このタームの半年間はもちろんですが、爽塾史上初めて半年以上の継続受講をしてくださった生徒さんの作詞を学び始めてから1年間の真摯な取り組みに、この場を借りて感謝します。4月からの半年でさらなるスキルアップをしながら、未完成の歌詞をベストな形で完成させていきましょう!

 

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歌に力を!

 

※以下、3月下旬に映画館で鑑賞した映画の数々、いや一部抜粋です(笑)。クリエイティヴワークにはインプットは欠かせませんが、自分の場合、五感でストーリーを体感できる劇場での映画鑑賞が週末のルーティーンになっています。


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私こと、吉里颯洋がオンラインにて主宰している「作詞教室・爽塾」。

生徒さんの声も交えながら、2023年後期11回目のレッスン・レポートをお届けします。

終了まで、残りのレッスンはあと2回! 生徒さんには今回のレッスンでお披露目する課題曲もこのタームではラストの4曲目となり、いよいよ「卒業制作」ということに。

1限目の内容は・・・

本日のメインテーマ、新しい課題曲の歌詞の内容を決めていく「企画会議」に、じっくり取り組みました。新しい課題曲は、憂いをびつつもスケールの大きなバラード。映画の主題歌にもなりそうな素敵なメロディを聴くにつけ、作曲者の田村信二さんのメロディメーカーとしての才能に敬服するばかりです。

そんな曲に対して、生徒さんは「プロポーズされた36歳の独身女性が、結婚を決意する心境を描きたい」とのこと。仕事に打ち込んできた女性が年下の男性と出会い、恋に落ちて、諦めていた結婚という夢を叶える。そんなストーリーの歌が共感を呼ぶには?と考えると、いつにも増して表現のリアリティを追求したいところ。歌詞の背景にあたるストーリーを紡ぐのは得意な生徒さんなので、彼と彼女のやりとりなども歌詞に適宜盛り込みつつ、いつも以上にイキイキした物語を紡ぐようアドバイス。歌詞の仕上がりが楽しみです。

2限目の内容は・・・  

短い休憩を挟んで、過去作のレヴュー(講評)へ。

初稿では「Melody」というタイトルで、「恋人を亡くしたシンガーソングライターの女性が再起していく」というテーマでしたが、私のアドバイスもあり、「地方のオーケストラで恋人と知り合った女性が同じオーケストラで知り合った恋人に先立たれながらも、悲しみから立ち直り、明日を模索していく」ようなストーリーに改変。タイトルもシチュエーションの変更を反映して「空と風と君のシンフォニー」と変更されました。

この生徒さんの最近の傾向として、2度目の提出で歌詞のクオリティがグッと上がるのですが、今回もまたそうなったのは良かったと思います。今回から、リライト時の工夫や苦労した点などをメモとして歌詞のファイルに添えてもらったのも、進捗管理の意味で収穫がありました。講評の内容を一部抜粋してご紹介します。

【講評】

・クリスマスソング同様、2度目の提出でクオリティがグンと上がったのは素晴らしいの一言です。50点ぐらいの内容が70点ぐらいにグレードアップした感じでしょうか。

・タイトルの変更と修正後のサビについては、格段に良くなりました。

・元のテーマに添って底上げをするなら、「かつての恋人が天国にいる」ということが明快に分かるような表現がある方が悲しみの淵から主人公が立ち直りつつあるというストーリーの骨子が伝わります。そうしたフレーズをなるべく冒頭に組み込み、それに対するヒロインの心情がさらに真に迫った描写で描けるか、トライしてみましょう。

そして、もう1作レヴューしたのは、生徒さんにとってはおそらく別世界を描くことになる「見果てぬ夢(仮題)」。もっともこちらは、作詞そのものには着手していません。生徒さんが企画した歌詞のストーリーは、「プロのシンガーになる、メジャーデビューする夢を諦めきれずに上京した主人公が東京で再び夢を追う」というもの。歌詞の世界観が生徒さんの実像からかなり遠く、いつも通りのメソッドで歌詞が仕上がらないと判断したため、彼の心情をリアルに感じてもらうため、「主人公が自分を励ますために愛聴しているであろうロックナンバーを集めたプレイリスト」を私が作成してシェアしていました。いきなり作詞に取り掛かるより、まずは主人公の気持ちを理解するのが先決という判断で、いつもの「歌詞の企画立案→作詞」というルーティーンを「歌詞の企画立案→取材的なプロセス→作詞」というスタイルに変更したのです。爽塾のささやかな歴史を振り返ってみても、これは初めてのトライ。裏話をすると、生徒さんがこのターム以降の継続受講をする可能性を見越しての施策でした。「1つの歌詞を仕上げるのに数ヶ月かかろうと、良作が書ければOK」というスタンスです。

そのプレイリストで主人公の気持ちを存分に味わってもらい、今回出した課題は、「それぞれの曲の歌詞の中で主人公が共感している、お気に入りのフレーズを抜き書きしてください」というもの。結果は最初からほぼ分かっていて、全問正解。生徒さんの心の中にいる主人公がどんな気持ちでお気に入りのロックンロールを聴いているのか? 歌詞のどのフレーズに共感しながら、時にくじけそうになる自分の心を励ましているのか? それは、作者たる生徒さんが「きっとこうだろう」と思ったことが正解なのです。以下、生徒さんのコメントです。

次のステップとして、「プレイリストの5曲と課題曲1曲、合計6曲の構成で、主人公が企画&開催する架空のライヴのセットリストを作成せよ」という、かなりロックンロールな課題を出しました(笑)。海外旅行で見知らぬ土地を訪ねて、ガイドブックにはない魅力に遭遇するかのように、今回のスペシャル・メニューを通じて、生徒さんが「ロックンロール」という未知なるドアを開けてくれたら、かつての自分からは想像もつかない歌詞が生まれるはず。こうして歌詞の完成に向けてさまざまな試行錯誤を重ねていますが、課題曲自体は譜割が時に難しい激しいロックナンバーではないので、主人公の心情に寄り添えれば必ず完成させられるはずと信じています。

そんなこんなで、今宵のレッスンも無事に終了。

このターム最後のレッスンとなる次回は、レッスン後に打ち上げをする予定なので、それも楽しみです。

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歌に力を!

 

※ロックンロールの歌詞に時に欠かせないのが、リアルなストリート感覚。東京がもし夢を追うためのリングなら、彼の目に写るものは何なのか、気になりますね。写真は、都心ではなく、西武所沢駅側のプロぺ通り。

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私こと、吉里颯洋がオンラインにて主宰している「作詞教室・爽塾」。

生徒さんの声も交えながら、2023年後期10回目のレッスン・レポートをお届けします。

1限目の内容は・・・

今回のレッスンは、作品のレヴュー(講評)がメインテーマ。「最新の課題曲に書かれた歌詞を優先する」というセオリーに逆らって、完成間近のクリスマスソングのレヴューから行いました。しかも、果敢にも「修正箇所を指摘して、レッスンのその場で歌詞を仕上げてもらう」という爽塾史上初の試みにトライ! なぜ、こんなことをしたのかと言えば、このタームの終了まであと3回という追い込みの時期なので、少しでも新作の歌詞の制作に時間を割いて欲しく、このスタイルにトライした次第です。「次回までに、ここを直してください」というやり取りができるのもあと数回ですから、「先を急ごうぜ!」という決断でした。トライの結果、該当箇所の問題点をロジカルに指摘すると、生徒さんがこちらが思う正解をすぐにレスポンスしてくれたので、ついにクリスマスソングは完成! 別記事にアップしているとおり、完成版は現時点での最高傑作になったかと思います。以下、生徒さんのコメントです。

まずは、歌詞が完成して良かったですね。苦労も味わったとは思いますが、作詞の楽しみが存分に味わえたのではないでしょうか。これを励みに、粛々と前進していきましょう。大切なことは、「1つの作品が完成するまでに得られた経験や学びを他の作品の制作に生かしていく」ことです。さらに噛み砕いて言うと、「どこをどう直されたのかをきちんと把握して、出来る限り、その修正のプロセスを独力で実行できるように努めていくことです。

2限目の内容は・・・  

短い休憩を挟んで、難敵と戦う2限目に突入。

生徒さんが7曲目の課題曲に対して企画したストーリーはなかなか秀逸で、夢を諦めきれずにあがく主人公の生き方は男性の自分から見ても大いに共感できるものでした。以下、企画書より一部抜粋してご紹介します。

「主人公は31歳。地元で一度就職し2年ぐらい働いたが、やっぱり歌がいい、一度きりの人生、自分の大切なもので生きようと思い25歳の時に上京した。恋人はおらず、自分が夢を叶えるまでは脇目も振らず、夢だけを追うつもり。現在はライブハウスで30〜50人程度の集客があり、応援してくれているも熱心なファンもいる。オーディションでは最終選考にパスしないという経験をたくさんしていて、メジャーデビューのチャンスが掴めていない。灯りが見えない焦りと辛さのなかでもがいているのが現況。上京後はずっと、バーテンダーの仕事を続けてきた。かつては凱旋して地元の友達に成功した姿を見せたいと思っていたが、東京で音楽仲間と出会って気持ちが変わった。 自分が頑張ることで応援する人たちを笑顔にしたい。ファンの人たちがもっと喜んでくれるような、そんな夢の叶え方をしたいと思うようになった」

これだけ濃厚なストーリーがありながら、作詞が難航しているのはなぜなのか? 少々お話してみてたどり着いた結論は、「さまざまな葛藤を抱えながら夢を追う主人公の忸怩たる心情をリアルに感じられていないからなのではないか?」ということ。とは言え、何も恥じることはありません。生まれて初めて聴いた課題曲から受けた印象からインスピレーションを得て、たかだか30分ぐらいで前述したような濃厚なストーリーをまとめられる人がどれだけいるでしょうか? 

もっとも、爽塾では、新作の歌詞を作る度に、この企画立案のステップをしっかりやっていくので、回を重ねるごとに誰しも習熟していきます。「面白そう!」と思った方は、お気軽に爽塾の門を叩いてみてくださいね。

閑話休題。

話をレッスンに戻すと、リファレンスとして、歌詞の主人公が好んで聴いていそうなロックナンバーを2曲続けて聴いてもらいました。課題曲そのものはロックナンバーではありませんが、彼のようにガッツを燃やして生きる男性の決してきれいごとではない、リアルな心の叫びを味わって欲しかったのです。

レッスン後には「自分を励ますために、彼が聴いているお気に入りのロックナンバーたち」というコンセプトで、プレイリスト を作成、生徒さんにシェアしました。架空の人物であるストーリーの主人公に取材することはできなくても、彼が拳を握りしめて聴いているであろう楽曲たちに触れることで、彼の本音に迫れると思ったからです。さらに、「作詞するのはいったんやめて、彼が気に入りそうな歌詞のフレーズを曲ごとに抜き書きしてみて」という課題を出しました。これまでは未知のジャンルだったロック、ロックンロールの世界に少しずつ触れつつ、生徒さんには新しいドアを開けてもらえればと思っています。作詞を始めて1年未満なら、まだまだビギナー。焦ることは一切ありません。仕事でなく趣味でやる作詞ならではの「〆切なし」の開放感を楽しみつつ、いつの日か、この作品を完成させてもらえれば幸いです。

Power to The Songs!

歌に力を!

 

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※絶賛公開中のリトル・リチャードのドキュメンタリー「I Am Everything」を上映中のシネマート新宿のディスプレイ。kotonohaさんが構想中の歌詞の主人公が実在していたら、必ずチェックしているはず。なぜなら、偉大なるロックンロール・ジャイアンツの1人、リトル・リチャードは、このジャンルの源流で輝き続けるシャイニング・スターですから。

レッスンの中から生まれた受講生の作品をご紹介します。

リライトの末に完成した歌詞と、最初に書いた初稿を併せて掲載します。

 

my winter gift(完成版)

 

作詞:kotonoha

作曲:田村信二

 

1A)

 せわしなく過ぎる クリスマスの日  

 店先のポインセチア 片付けて帰ろう  

 君は今ごろもう 飛行機のなかだよね  

 大好きな笑顔 思い浮かべ  

 

1B)

 はじめて過ごす 聖なる夜(よる)を  

 ずっと待ち焦がれていた I love you 

 

 

1C)

 遠くから 手を振る君  

 名前を呼ぶ声が 愛しく響くよ  

 思いきり 抱きしめたぬくもりは  

 一番に欲しかった わたしだけの winter gift  

 

D)

 会えない夜(よる)も まぶしい朝も 

 いつもそばにいるから  

 ずっと大切にしたい oh  

 

2C)

 差し出した 大きな手に  

 きらりと輝いた 花のイヤリング  

 不器用な君からの おくりもの  

 この世界(せかい)にひとつだけ 最高のwinter gift 

 

E)

 「遠い場所から この日のために  

 いそがしいのに ほんとにありがとう」 

 選んでくれた 小さな花が  

 耳元で ほら 輝いて        

 

ホワイトクリスマス(初稿)

 

作詞:kotonoha                                   

作曲:田村信二

 

1A)

 街に輝いた イルミネーション  

 大急ぎ 今ごろは 飛行機のなかだね

 ひとりきり 君を待つ空港のロビー 

 大好きな笑顔 思い出して 

 

1B)  

 聖なる夜(よる)が 終わりを告げる  

 ずっとこの日を待ってた  

            

1C)

 降りつもる 白い雪は 

 ふたりで初めての ホワイトクリスマス 

 ひさしぶり 抱きしめたぬくもりは 

 一番に欲しかった 冬のプレゼント 

 

D)     

 会えない夜(よる)も さみしい夜(よる)も  

 遠い空の下(した)でも  

 ずっと大切にしたい

           

2C)

 降りつもる 白い雪は  

 ふたりの幸せな ホワイトクリスマス  

 手を伸ばし 触れられるぬくもりは 

 一番に願ってた 冬のプレゼント  

 

E)

 「遠い場所から この日のために  

 いそがしいのに ほんとにありがとう」  

 選んでくれた 小さな花の  

 首飾り ほら 輝いて  

 

 

完成までのプロセス

 

この作品は2度目の提出でかなりレヴェルアップしたのですが、こちらの力不足もあり、思わぬ難産に。5回目の提出時に至らなかった部分をレッスンの最中に修正、完成の○を付けました。

テーマの設定もなかなか難しい「クリスマスソング」というお題に対して、「北海道在住のお花屋さん勤務の女性と東京のテレビ局勤務の彼氏との遠距離恋愛。2人にとって最初のクリスマスに、彼が選んだ心尽くしのギフトに彼女が心を震わせて・・・」というピュアなラヴストーリーを描き切り、kotonohaさんの現時点での最高傑作の誕生となりました。完成、おめでとうございます!

 

 

私こと、吉里颯洋がオンラインにて主宰している「作詞教室・爽塾」。

生徒さんの声も交えながら、2023年後期9回目のレッスン・レポートをお届けします。早いもので、このタームもこの日のレッスンを入れてあと4回。取り組む課題も、残すところ、あと2つのみ。受講中の生徒さんには、1作でも多く、卒業までに課題を完成させて欲しいと願うばかりです。

1限目の内容は・・・

さて、今回のレッスンは新しい課題曲の歌詞の内容を決めていく「企画会議」がメインテーマ。昨年の前期から継続受講している生徒さんにとって、新しい課題曲は通算7曲目になります。今回新しく聴いてもらった課題曲の曲調は、少々の寂しさもたたえた、マイナーキーのミディアムテンポのナンバー。メロディの素晴らしさは言わずもがなです。「受講期間中は当たり前のように接している田村信二さん作曲の課題曲のクオリティの素晴らしさは、卒業後に実感することになります」と受講生の皆さんにはいつも同じことを言いますが、今回もまた、「今にもヒットしそうな」完成度です。

そんなメロディに触発されるように生徒さんが考案したテーマは、いつもとは趣の異なる「歌の道を志して社会人になってから地元から上京し、バーテンの仕事をしながら夢を追う30代男性の物語」という内容。これまでは、比較的ご自分の実像に近いピュアな感じの女性目線のラヴストーリーを描いてきた生徒さんなので、このテーマで歌詞を完成させられれば「新しいドア」が開けられますね。こちらから指定せずとも、「男性目線の歌詞を描こう」と思い立ったのは、さらなるスキルアップには絶好の機会です。なぜなら、作詞の楽しさ、醍醐味のひとつは、「年齢や性別を超えて、主人公の心情を描くこと」ですから。自分の作品で言えば、当時55歳の矢沢永吉さんに書いたロックンロールナンバーの「年甲斐ない関係ない限界なんてない」と10代の少女が恋のときめきを歌うwhiteeeen の「ゼロ恋 」では言葉遣いも雰囲気もメッセージの内容もまったく違いますが、書いたのはいずれも私、同一人物です(笑)。


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そして、歌詞の企画、構想を生徒さんに発表してもらうと、男性目線の歌詞のせいか、いつもに比べると歌詞の背景にあたるストーリーが若干ファジーな印象。そこで、あれこれと話し合いながら、ストーリーのディテールを一緒に構築していきました。講師というより、プロデューサー目線で「歌詞の主人公に以下のような背景があると、リアリティが向上するのでは?」という提案をした感じです。

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・主人公は歌手になる夢を捨てきれずに上京する前、一度は夢をあきらめ、定職に就いた時期があった

・課題曲のような曲調の歌を歌っていると仮定すると、志向する音楽のジャンルは演歌や歌謡曲ではなくポップス系

・上京してから年月も経っているのでライヴの集客もあり、そこそこのファンも付いている。ただし、惜しいところでオーディションに落選してしまうような状況で、「メジャーデビュー一歩手前」というステージではなく、夢の実現まではまだ距離がありそう

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これまで書いてきた女性目線の歌詞には登場しなかった「なかなか夢が実現しないことへの苛立ち、夢をあきらめない強い気持ち」といった野心家の男性ならではの心情も歌詞のフレーズに落とし込めると良いですね。大切なことは、主人公のキャラクターに合わせたトンマナを徹底したうえで、(曲調はロックではないですが)彼の忸怩たる思いをメロディに合わせて叫ばせることなのかなと思います。

2限目の内容は・・・  

短い休憩を挟んで、過去作のレヴュー(講評)を行いました。

まずは、完成間近のクリスマスソングから。既に骨格の部分はできあがっているため、表現のディテールの底上げを促すためのディレクションを行っていきました。例えば、リピートされる同じフレーズに対して書かれた「会えない夜(よる)も さみしい夜(よる)も」という歌詞ですが、この箇所には、「同じようなメロディがリフレインされる際には、表現のバラエティを 熟考するとベター。ここでは『さみしい夜』の箇所は『会えない夜』と対になるような表現を考えてみて」とアドバイス。

その他、ちょっとした言い回しを再考した方がベターだと思われる箇所に対しては、実際に代案となるフレーズを歌ってみせて修正を提案し、「頭で考えた歌詞がうまくメロディにハマらない時も、早々に諦めず、納得できる最適解を見つけるためには可能な限り、試行錯誤を繰り返しましょう」ということを伝えました。

続いて、別作品のレヴューへ。「恋人との死別から時間を経て、シンガーソングライターの女性が立ち直っていく」作品については、こちらの提案を踏まえた修正後の企画書のみをレヴュー。こちらの提案を踏まえて、ヒロインと恋人の双方がシンガーソングライターという設定は変更され、リアリティが向上しました。「主人公にとって大切な思い出、楽しかった思い出を必ず盛り込みましょう。あの時、あんなことがあったよね。本当に楽しかった。思い出すと、今でもクスッとほほえみたくなる・・・みたいなイメージです」とコメントを添えてフィードバックしました。生徒さんに改めて伝えたのは、「たとえ誰かを励ませなくても、世界でたった一つのストーリーを田村信二さんの美しいメロディに乗せて描ければそれだけでも充分に尊い」ということです。さらにアドバイスをすると、テキストに記載しているとおり、世界でたった一つのストーリーにふさわしいタイトルになればベターです。

以下、生徒さんのコメントです。

そんなこんなで、今宵のレッスンも無事に終了。

常に最新の課題が優先になるため、未完成の歌詞が溜まりがちですが、ここはラストスパートをするタイミングかも? 社会人の生徒さんはお仕事との兼ね合いもあるかもしれませんが、できる範囲でペースアップにトライしてみてくださいね。

「異性の目線で作詞をする」という新しいドアを開ける楽しみは、一度きりしか味わえません。ぜひ、全力で楽しんでください!

Power to The Songs!

歌に力を!

 

写真下)毎年、バレンタインデーを過ぎてから消灯するハート型ディスプレイと、その奥に輝くクリスマスツリー。西武所沢駅西口にて撮影。
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私こと、吉里颯洋がオンラインにて主宰している「作詞教室・爽塾」。

生徒さんの声も交えながら、2023年後期8回目のレッスン・レポートをお届けします。

1限目の内容は・・・

今回は、課題のレヴュー(講評)がメインテーマ。まずは、前回、2度目の提出にして予想以上の高得点を叩き出し、ゴールが見えてきたクリスマスソングからレヴューを行いました。結果は、もう一息でゴールイン、完成はならず、というところでした。とは言え、「あぁ、完成しなかった」とがっかりすることはありません。歌詞はちゃんと成長していますから。以下、レヴューしたポイントです。
・ブリッジの最後の行のラストに関しては、歌詞の最後の1文字「い」をそのまま伸ばすのは、語感的に今ひとつなので、サンプル歌詞を参考に再考を。
・2番のサビのラストについては、プレゼントを手にした時のヒロインの感情をメロディにうまくフィットさせつつ、1番の同じ箇所とのコントラストを描いてみましょう。

ということで、クリスマスソングの歌詞の完成は、次回以降に持ち越しに。続いて、新たな課題曲に取り組んだ新作の歌詞のレヴューへ。

そもそも、生徒さんが「辛い思いをした方、現在している方、頑張る方への応援歌。 辛い思いをしながらも頑張って生きてきた方への応援歌」というテーマを設定したのは、歌詞の企画にあたって「(男女が出会って恋に落ちてという設定の)普通のラブソングではなく、メッセージソングを作りましょう」というお題を指定したからなのですが、「メッセージソング」という直接的な表現がよろしくなかったかも?と少々反省しました。そう言うよりは、「普通のラブソング以外の要素が含まれていればOK」というくらいの緩い感じの方がベターだったのかもとも思いました。と言うのは、生徒さんが描こうとしている「恋人に先立たれた女性が立ち直っていく」ストーリーを前述の「応援歌」的なテーマに結び付けるのは少々無理があると感じたからです。

両親に先立たれることは多くの人が経験することですが、先立つ人が恋人ならば話はまた別。ヒロインがシンガーソングライターであればなおさら、亡くした恋人との思い出や彼への思いを自作の歌に込めていたはず。大きな喪失感の中で、彼との思い出が詰まった歌を歌い続けるのは難しくて当然です。いや、歌えなくなって当然です。リアリティのあるストーリーを企画することにおいては「爽塾」のささやかな歴史を振り返っても屈指の実力がある生徒さんなので、「元の企画書にあった『ピアニスト』という職業に設定を変えてみては?」という提案をしました。そうすることで歌詞の背景にあるストーリーのディテールに齟齬がなくなり、リアリティの向上に繋がるのでは?という思いがあったからです。さらに言うと、ヒロインが悲しみから再起するストーリーとは言え、リライトする期間も含め、この作品に長期間携わる生徒さんのメンタルのことも配慮しました。「聴いてくださる方を励まそう」と思って書き始めた歌詞に取り組むのが苦行になっては元も子もないですから。


2限目の内容は・・・  

休憩を挟んだ2限目でも、引き続き、この歌詞のクオリティアップのためのあれこれをお話していきました。まずは、ほぼ同じような体験をした女性シンガーの方のインタビュー記事を紹介して、その女性が失意から立ち直って再び歌い始めたプロセスなどについても言及。さらに、シチュエーションに多少の違いはあれど、大切な人に先立たれた後に残された主人公を描いた自作の歌詞を2篇紹介し、曲も併せて聴いてもらいました。ビギナーの方が取り組むには少々ハードなテーマですから、少しでもヒントになればと思い、さまざまなリファレンスを提示した次第です。

レッスン後にフィードバックした歌詞のファイルには、以下のコメントを添えました。

「ヒロインと同じくらいの悲しみを味わった人を励ましたいというのは目標としては素晴らしいのですが、人の悲しみのディテールも深さも十人十色です。とてもデリケートなテーマなので、まずはリアリティの向上を念頭に置き、ストーリーのディテールを再考すると共に、ヒロインの現況と心境を描き切ることを念頭に置きましょう」

爽塾のレッスンでは、基本的に受講生が書きたいテーマで自由に歌詞を創作していきます。今回のように多少の方向性を指定する場合も同様で、歌詞を評価する際も、まずは「書こうとしたテーマに添った内容になっているか?」というポイントでチェックしていきます。新しい課題は受講中の生徒さんにとっては初トライになる尊いテーマでの作詞ですから、このタームが終了する3月末までにぜひとも完成させて欲しいところです。

さて、次回のレッスンは、このターム3曲目の新しい課題曲を聴いて企画を練る回。このタームでは、少しでもモチヴェーションが上がるよう、生徒さんの成長具合に合わせて、その都度、課題曲を選ぶようにしているので、これからじっくり悩んで選曲したいと思います。

Power to The Songs!

歌に力を!

 

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